ステムとは?【職業音楽家視点でのステム解説】

DTM、音響、音楽関連

どうも

 

「ステム」

 

単語にしてみれば1単語だが、意味は業種によって大きく変わってくる。

今日は各職業別にステムを解説しようと思います。

 

ステムの大まかな意味

 

各トラックをいくつかのトラックにまとめたものをステムという。

例えばドラムセットをまとめたものや、シンセ系の音色をまとめたトラックなどある。

 

だが、各職業や目的によってまとめ方が違う。この違いをこれから解説していく

 

作曲家⇔スタジオ間でのステム

 

現代のボーカルレコーディングではレコーディング当日に楽曲が完成してないことも多々あり、レコーディング当日には「レコーディングをするための仮データ」をスタジオに送信することが多い。

 

この場合の作曲家が用意するステム

 

  • ドラム3点(バスドラ、スネア、ハイハット)各パラトラック
  • 三点以外をまとめたトラック
  • ベースのパラ(複数ある場合はリズムを刻んでいるものとオカズ系を分けたほうがいい)
  • ギター
  • ストリング系のステム(あれば)
  • コード系シンセのステム
  • メロディ系シンセのステム
  • メインメロディのmidiデータ(BPM情報、マーカー情報を含める)
  • 仮歌(あれば)

 

ビットレートに指定が特にない場合は日本では24bit/48kHzで送信するのが望ましい

 

ドラムを三点でばらす理由

 

歌手には歌いやすいバランスがある。

細かい歌手なら1テイクごとに「スネア下げてください」「キック上げてください」とかお願いしてきます。

スタジオではアーティストがお客様なのでそれに従う必要がありますが、バラバラで来なければ合わせることができません。

 

基本的には作曲家もレコーディングエンジニアも「接客業」です。お客様の立場になって必要なものを事前に用意しておく必要があります。

 

RECエンジニア⇔PA屋さん間のステム

 

現代のライブシーンでは打ち込み音源や事前にレコーディングしてある音源を演奏と同時に流すことがある。

そういった音源を「同期音源」と言い現場では「同期」と言われる。

 

RECエンジニアはPAやさんに同期音源、つまりステムを送ることが多々ある。

 

この場合のRECエンジニアが用意するステム

 

  • ドラム3点(念のため)
  • 三点以外を(念のため)
  • ベース(念のため)
  • ギターのパラデータ
  • ストリング系のステム
  • コード系シンセのステム
  • メロディ、オカズ系シンセのステム
  • ソロがある場合はソロの楽器のパラ
  • メインメロディのmidiデータ(BPM情報、マーカー情報を含める)

 

ここで気を付けなければいけないのは、リバーブやディレイ音も同時に書き出さないといけないことだ。作曲家とスタジオのステムとの大きな違いはここだ。

言わずとも、リバーブやディレイはセンドリターン方式を使ってかけることが多いので、BUSトラック等をまとめて書き出しできるcubaseでも各トラックをソロにして書き出しをしなければいけない(そもそも職業エンジニアがcubaseをつかうことはほぼほぼないだろうが)

 

また、ビットレートに指定が特にない場合は日本では24bit/48kHzで送信するのが望ましい

 

RECエンジニア⇔MAスタジオ間のステム

 

アニメの主題歌やアニメ、ドラマの劇伴はステム納品が原則となっていることが多い。

例えばアニメのEDに入る際特殊な入り方をする場合、音数やサウンドが違う等、違和感を感じたことがある人は少なくないはずだ。

あれはステムを渡しているため、MAエンジニアが好き放題(?)しているわけだ。

 

この場合のRECエンジニアが用意するステム

 

  • パラデータ
  • メインメロディのmidiデータ(BPM情報、マーカー情報を含める)

 

また、この場合もリバーブやディレイを含める必要があり、ビットレートに指定が特にない場合は日本では24bit/48kHzで送信するのが望ましい

 

現代のトラック数

 

わざわざステムの意味を知りたくてこのページを開いた人には言うまでもないが、最近のアニソンとかのトラック数は最低でも50はある。(多いものだと100超えているものも)

 

この場合、最低でも50回書き出す必要があり普通に苦行である。

 

現代のレコーディングシステム

 

現代の商業レコーディングはほぼほぼProtoolsHDシステム(現ProtoolsUltimate)をし使用している。

Protoolsは11からオフラインバウンス(CPUorDSP計算でのバウンス)に対応したが、10までは実時間での書き出ししかできなかった。

 

しかし、Protools10→Protools11にアップデートする際大きな壁が立ちはだかった。

いくつかあるが、簡単に言うと「機材の買い替えが必須」「今まで使えてたプラグインが使えなくなる」この二つだ。普通に買い替えを考えると100万は飛びます。

 

ここ最近レコーディングスタジオや個人エンジニアはわれわれDTMerに客を奪われあまり景気が良くないので、更新できてないスタジオやエンジニアも多々いる。

 

つまり最低でも50回、実時間で書き出しをしなければいけない。

 

「ステムください」この一言でエンジニアの時間を5時間近く奪うことになる。

 

さいごに

 

ステムといってもいくつかの種類があるということがおわかりいただけただろうか。

僕は職業音楽家ではないが、以前エンジニアにこんな話を聞かされたのをおもいだしながら書きました。

 

記憶の限り書いたのでもしかしたら多少違っている情報があるかもしれないので、「ステムください」と言われたら勇気を出して何がほしいか聞いてるといいと思います。

 

 

 

 

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